いま物流で注目されている「ダブル連結トレーラー」とは?

はじめに

今、物流業界(物を届ける仕事の世界)では「ダブル連結トレーラー」という特別なトラックが注目されています。この車両は、1人のドライバーが2台分の荷物を一度に運べるという特徴があります。例えば、通常ならトラック2台と2人のドライバーが必要だった場面で、この「ダブル連結トレーラー」を使えば、1台のトラックと1人のドライバーで済むのです。

これによって、時間も人も燃料も節約でき、効率よく物を運ぶことができるというわけです。なぜこうしたトラックが必要になったのでしょうか?理由はシンプルで、「トラックドライバーが足りなくなってきたから」です。

日本では、トラックで荷物を運ぶ人の数が年々減ってきています。その背景には、ドライバーの高齢化や若い人のなり手が少ないといった問題があります。特に長距離を運転する仕事は、体力的にハードなこともあり、なかなか人が集まらないのです。

でも、ドライバーがいなければ、お店に商品が届かなくなったり、ネット通販が遅れたりして、私たちの生活にも影響が出ますよね。そこで注目されたのが、この「1人で2台分運べるトラック」、つまりダブル連結トレーラーなのです。さらに、こうした車両を使えば、トラックの数も減るので、排気ガス(CO₂)を減らすことができ、環境にもやさしいというメリットもあります。

ただし、いいことばかりではありません。

実際にこのトラックを運転するドライバーたちからは、「便利だけど、休憩できる場所がない」とか「道路や制度が追いついていない」といった声も上がっています。つまり、「技術は進んでいるけど、現場ではまだ課題がある」というのが今の状況です。

このコラムでは、ダブル連結トレーラーがどうして必要とされているのか、それが現場でどう使われているのか、そしてこれからどんな未来が待っているのか──トラックドライバーの仕事に興味がある人や、物流に関心のある人に向けて、やさしく分かりやすく紹介していきます。 

目次

ダブル連結トレーラーって、どんなトラック?どうして日本で使われはじめたの?

見た目は?どんな仕組み?

「ダブル連結トレーラー」という名前、少し難しそうに聞こえるかもしれませんね。でも、仕組みは意外とシンプルです。このトラックは、1台の運転席(トラクタ)に、2つの荷台(トレーラー)をくっつけて走るスタイルです。つまり、1人のドライバーが、2台分の荷物を1度に運ぶことができる大型トラックなのです。

全体の長さはなんと25メートルほど。これは普通の大型トラックよりもずっと長くて、ざっくり言うと小学校のプールの長さと同じくらいです。1台でたくさんの荷物を運べるので、トラックの台数を減らすことができます。

それによって、ドライバーの人数も燃料の使用量も減り、運送会社にとっても環境にとってもいいことづくしです。

でもその分、運転の技術や注意力が求められるため、簡単な仕事ではありません。大型ドライバーとしてのスキルがしっかりと必要とされる仕事です。


どうして日本で導入されはじめたの?

ダブル連結トレーラーは、ヨーロッパなどの海外ではすでに活用が進んでいます。日本では2016年(平成28年)から国土交通省が試験的な走行を始め、2019年から一部の高速道路で本格的に運行が始まりました。
なぜ日本でも導入されるようになったのでしょうか?理由は3つあります。

① ドライバーが足りないから

日本ではトラックドライバーの数がどんどん減っています。特に若い人のなり手が少なく、運送業界は「人手不足」が深刻な問題になっています。そこで、1人のドライバーで2台分の仕事ができるダブル連結が注目されるようになったのです。

② 環境にやさしいから

トラックの数が減れば、排気ガス(CO₂)も減ります。それは地球温暖化対策としてもとても重要です。「物を効率よく運べて、環境にもやさしい」──そんな未来の物流の形として、国も企業も期待しているのです。

③ 物流のしくみを変えるきっかけにしたいから

これまでの物流は、「人手でなんとかする」スタイルでした。でもこれからは、システムや技術を使って少ない人数で効率よく回すことが求められます。ダブル連結は、そのための第一歩でもあるのです。


でも、導入はまだ一部だけ

ここまで読むと、「すごく便利なトラックだし、もっと使えばいいのに」と思うかもしれません。でも現実には、まだまだ広がっていません。

理由は、日本の道路事情です。日本は土地がせまく、道路やサービスエリア(SA)も広くありません。長さ25メートルのトラックを止めたり、曲がったりする場所が少ないため、走れる場所がかなり限られてしまうのです。

そのため、今は主に大きな物流会社だけが一部の高速道路で使っているというのが現状です。中小企業や地方の運送会社では、まだ対応がむずかしいのです。


ドライバーから見た「ダブル連結トレーラー」のホンネ

── 理想と現実にはギャップがある?

数字では「すごく効率がいい」

前の章で紹介したように、ダブル連結トレーラーは1人で2台分の荷物を運べる、とても効率の良いトラックです。「人手不足を助ける」「環境にやさしい」「コスト削減になる」と、たくさんのメリットが期待されています。

たとえば、今まで10トンのトラック2台で運んでいた荷物を、1台で運べば・・・

  • ドライバーは1人でOK
  • トラック2台分の燃料より少なく済む
  • 走る台数が少なくなるから、渋滞や事故のリスクも減る

まさに“夢のトラック”のように思えますよね。会社側としては「すばらしい技術だ」「もっと導入したい」と前向きにとらえています。でも、実際に運転する現場のドライバーたちの声を聞いてみると、ちょっと違う意見も出てきます。


「運転はできても、休憩ができない」

このトラックの最大の問題は、「停める場所がない」ことです。ダブル連結トレーラーは、全長が25メートルもある超ロングトラック。そのため、普通のサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)では、止められないことが多いのです。現在、日本全国の高速道路でダブル連結を止められる場所は約150カ所程度。これは、トラックの数に対して明らかに足りません。


トラックドライバーには休憩のルールがある

法律では、トラックドライバーは「4時間に1回30分は必ず休憩しなければいけない」と決められています。

これは、安全のためです。長時間運転を続けると、集中力が落ちて事故の原因になります。でも、休憩したくても「停められる場所がない」となると、どうなるでしょうか?

  • 無理をして次のSAまで走る
  • 駐車できる場所を探してウロウロ
  • 最悪の場合は、路肩に止めて仮眠…

こうなると、ドライバーの体も危険ですし、事故やトラブルのもとにもなってしまいます。


ドライバーの声:「便利でも、使いたくない」

実際に運転している大型ドライバーの中には、こういった本音を話す人もいます。

「効率がいいのは分かるけど、精神的な負担が大きい」

「どこで休めるかを毎回考えるのがストレス」

「運転そのものより、駐車できるかどうかの方が不安」

トラックは“走ること”だけでなく、“安全に止まること”も大切な仕事の一部です。その「止まる場所」がなければ、どれだけ技術が進んでも、現場では使いづらいだけの道具になってしまいます。


求人への影響も

最近では、「トラックドライバー 求人」や「大型ドライバー 求人」に応募しようと考える人たちも、こうした現場の状況をSNSなどで知っています。だからこそ、「カッコいい」「効率が良い」というだけでは人が集まりにくい時代になってきました。求人を出す会社にとっても、こうしたドライバーのリアルな声を知っておくことは、とても大切なことです。

ポイント

  • ダブル連結トレーラーは、数字で見るととても効率的なトラック
  • でも現場では、「休めない」「停められない」という大きな問題がある
  • ドライバーの安全と安心が守られないと、どんなにすごい技術でも意味がない
  • 「運べる」だけでなく、「休める」も一緒に考えることが必要

インフラ整備と制度の問題

── トラックは進化しても、道路とルールが追いつかない前の章では、ダブル連結トレーラーを運転するドライバーの苦労や本音を紹介しました。今回は、それに関連する「環境の整備」と「ルールの問題」について見ていきます。いくら新しいトラックがすごくても、走る場所や休む場所が整っていないと使えません。そして、それを決める法律や制度も、今の時代に合っていなければ、現場は困ってしまいます。


駐車スペースがまだまだ足りない

現在、国や高速道路を管理しているNEXCO(ネクスコ)などは、ダブル連結トレーラーに対応した特別な駐車スペースの整備を少しずつ進めています。

例えば

  • 那須高原サービスエリア(東日本)では、2024年からETCを使った駐車予約のテストがスタート
  • 中部や静岡のサービスエリアでも、予約できる専用スペースの導入が始まっています

こうした動きはとても前向きです。ですが、全体で見ると、まだごく一部にすぎません。2023年から2024年にかけて、全国で約1200台分の新しい駐車スペースを作る計画がありますが、これは、何万台もある大型トラックやダブル連結車に対してはほんのわずかです。

つまり、「新しい駐車場ができても、全然足りない」状態なのです。


「予約できる駐車場」も競争が激しい

さらに最近は、「ETC2.0」というシステムを使って駐車予約ができるようになってきました。これは便利な仕組みですが、台数が少なすぎて、予約の“争奪戦”になっているのです。

せっかく予約システムがあるのに、毎回埋まっていて使えない

予約できたらラッキー、できなかったら不安なまま運転

という声も、現場ではよく聞かれます。


特殊車両の「通行許可」が手間すぎる

もうひとつの大きな問題が、「特殊車両通行許可」と呼ばれるルールです。ダブル連結トレーラーのような大きな車は、どの道でも自由に走れるわけではありません。通るルートや道路の幅などをチェックして、国や自治体に申請して許可を取らないといけないのです。

ところがこの申請、

  • インターネットでできない地域もある
  • 毎回書類を出さなければならない
  • ルートや車両が少しでも変わると再申請が必要

など、とても手間が多く、時間がかかるのです。大手の物流会社なら専門の人が対応できますが、中小企業では負担が大きすぎて導入を断念するところもあります。


中小企業にはハードルが高すぎる?

現在、こうした整備や制度の対象になっているのは、主に大きな企業ばかりです。

ある中小運送会社の社長はこう言います

「試験的な運行も、大手ばかりが選ばれていた」

「中小企業にも使いやすい助成金や制度がなければ、不公平です」

確かに、いくら技術があっても使える人が限られていれば、広く普及することはできません。このように、「インフラ(設備)」「制度(ルール)」「公平さ(使いやすさ)」がセットになって整わないと、ダブル連結トレーラーは広く使われるようにはならないのです。

ポイント

  • 駐車スペースや予約システムは整備が進んでいるが、数が足りない
  • 通行許可の手続きがむずかしく、時間も手間もかかる
  • 中小企業が使いにくい制度になっているという声もある
  • インフラ・制度・公平性、この3つを一緒に進めていく必要がある

ドライバーの声に耳をすませば

── 技術より「休める場所がほしい」

ダブル連結トレーラーは、とても効率の良い運送方法です。でも、運転するのは「人」、つまりドライバーです。どんなに技術がすごくても、実際に働く人が安心して使えなければ、意味がありません。この章では、現場の大型ドライバーたちのリアルな声を紹介します。

「どこで休めばいいの?」

ダブル連結トレーラーを運転しているドライバーたちから、よくこんな声が聞かれます。

サービスエリアに入ったけど、連結車NGって書いてあって、あわてて次の場所へ向かった

予約はすぐに埋まってしまって、結局、どこにも止められなかった

無理に停めたら注意されて、精神的にも疲れた…

新しい技術よりも、まず“休める場所”を整えてほしい

このような話は、SNSやドライバー向けの掲示板などでよく共有されています。とても便利なトラックなのに、「使いにくい」「怖い」と思われているのが現実です。


「効率」だけじゃダメなんだ

会社や社会は、ダブル連結を「効率アップの切り札」として期待しています。たしかにそれは正しい考えです。でも、「効率がいいからすぐ導入しよう」というだけでは、現場で働く人たちの気持ちを無視してしまう危険もあります。

トラックドライバーにとって大切なのは

  • 無理なく走れること
  • ちゃんと休めること
  • 安全に仕事ができること

この3つがそろって初めて、「いい仕事だった」と思えるのです。


求人にも影響が出てくる

最近では、求人に応募する人たちも、インターネットやSNSでこうした現場の声を見ています。そのため、「かっこいいトラック」「最新のシステム」だけでは、応募のきっかけにはなりにくい時代です。

  • 働く環境がちゃんと整っているか
  • 安心して続けられる職場かどうか

これを重視する人が増えているからこそ、ドライバーの声にしっかり耳を傾けることが、会社にとっても大切なポイントになっています。

ポイント

  • ドライバーたちは、「技術」より「休める場所」がほしいと感じている
  • 実際に運転している人の声を無視しては、ダブル連結は広がらない
  • 働く人の安全や気持ちに配慮した整備が必要
  • 求人を出す会社も、現場のリアルな声を理解して発信すべき

少しずつ、よくなる方向へ

── 国や企業が始めた前向きな工夫

前の章では、「ダブル連結トレーラーは便利だけど、現場では使いにくい」というドライバーの声を紹介しました。では、その声を受けて、社会は何もしていないのでしょうか?

いいえ、実は少しずつですが、問題を解決しようとする動きも始まっています。この章では、国や企業が進めている「前向きな取り組み」を紹介します。


NEXCO(高速道路の会社)のチャレンジ

高速道路を管理しているNEXCOでは、ドライバーが安心して休憩できるよう、新しい駐車方法のテストを行っています。

たとえば、ETC2.0(自動料金支払いの機械)を使って、駐車スペースを事前に予約できるサービスが始まっています。これは、那須高原サービスエリア(栃木県)などで実証実験が行われており、少しずつ他のエリアにも広がっているところです。

他にも、足柄SA(神奈川県)や静岡SAでは、ダブル連結専用の駐車エリアを作ったり、予約システムの導入を進めたりしています。こうした取り組みによって、「休めない」「停められない」という不安を少しずつ減らしていこうという流れができています。


民間の運送会社も努力している

国や高速道路会社だけでなく、民間の運送会社でも工夫が始まっています。

例えば

  • 自社の倉庫や敷地にドライバー用の仮眠スペースをつくる
  • 深夜や早朝に働くドライバーのために、安全に休めるルートを設計する
  • 自社便のダブル連結だけでなく、他社にも駐車場所を開放する

こうした工夫は、ドライバーの体力やメンタルのケアにつながりますし、会社の評判アップや求人の強みにもなります。

求人でも「安心して働ける」がポイントに

求人サイトや採用ページでも、最近はこうした取り組みが紹介されるようになっています。「しっかり休憩できるから、無理のない働き方ができる」「新人教育にも力を入れていて、安心して働けます」こんなメッセージがあると、「ここなら働けるかも」と思える人も増えていきます。

ポイント

  • 国やNEXCOが、駐車予約システムや専用スペースを整備中
  • 民間の運送会社も、ドライバーが休みやすい環境づくりを工夫
  • 「休める」「安心して働ける」ことが、求人や職場選びでも大事にされている

これからの未来、どう変わっていく?

── ダブル連結が当たり前になるには何が必要?

ここまでの章で見てきたように、ダブル連結トレーラーはとても効率的で便利なトラックです。でも、ドライバーが安全に働ける環境や、それを支えるルール・設備がまだまだ足りていないのが現実です。

では、これからこのトラックをもっと使いやすくし、日本の物流を良くしていくには何が必要なのでしょうか?この章では、その“これから”について考えていきます。

① 駐車スペースやインフラをもっと増やす

まず最優先で必要なのは、もっと多くの場所でダブル連結トレーラーが停められるようにすることです。

例えば

  • サービスエリアやパーキングエリアに、連結車専用の駐車スペースを作る
  • 民間の倉庫や物流拠点にも、トラックが安全に仮眠できる場所を用意する
  • 都会だけでなく、地方にも均等に整備する

こうしたインフラ整備が進めば、「どこで休もう…」と心配することなく運転に集中できます。また、最近話題の電気トラック(EVトラック)などにも対応できるよう、充電設備や休憩室の整備も進めることが理想です。


② ルールや制度を時代に合わせて変える

現在は、大きなトラックが走るためには「通行許可」を毎回申請しなければなりません。これは時間も手間もかかり、特に小さな会社にとっては負担が大きいです。

今後はこうした制度改革が進めば、もっと多くの会社がこの便利なトラックを導入しやすくなります。

  • ネットで簡単に申請できる仕組みを全国に広げる
  • ダブル連結対応ルートを地図でわかりやすくする
  • 助成金や補助金の対象を、中小企業にも広げる

③ 企業の“戦略”も大切

トラックの進化や制度の整備だけでなく、それを使う企業自身の考え方(戦略)も重要です。

例えば

  • 「働きやすい職場にして、求人応募を増やす」
  • 「安全運転を守ることで事故を減らし、信頼される会社になる」
  • 「先にダブル連結を導入して、将来の配送ルートを確保する」

こうした考え方を持つ会社が増えれば、ドライバーにもメリットがあり、企業も成長できる。まさに“Win-Win”の関係です。

ポイント

  • まずは「停められる場所」をもっと増やすインフラ整備が必要
  • 次に、「使いやすい制度」に変えることで、中小企業でも導入しやすくなる
  • そして、企業が“人を大事にする物流”を考えて、戦略的に動くことが大切

結び:運ぶのは、技術じゃなくて「人の安心」

ここまで読んでくださったあなたは、ダブル連結トレーラーがどんなトラックで、なぜ今の物流業界で注目されているのか、少しイメージが湧いてきたかもしれません。確かに、ダブル連結トレーラーはとてもすごい技術です。1人で2台分の荷物を運べるなんて、まるで未来のトラックのようですよね。

でも、現場ではそれだけで仕事が成り立つわけではありません。

  • 安心して休める場所があるか
  • 長時間運転しても身体に負担がかからないか
  • 急なトラブルでも会社が支えてくれるか

──こうした「当たり前の安心」があってこそ、初めてその技術は“使えるもの”になります。

そして、その安心を守るために必要なのが、国や企業のしくみづくり、そして現場の声を聞く姿勢です。京都通運では、そうした視点を大切にしています。ドライバーがただ走るだけの存在ではなく、「考える現場のパートナー」として活躍できるように、働きやすい環境づくりと教育制度の充実に本気で取り組んでいます。

これからトラックドライバーを目指す人も、物流業界に興味を持っている人も、「どんな車を使うか」だけでなく、「どんな環境で働くか」をぜひ意識して選んでみてください。


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